あることをきっかけに「外郎売り」に出会いました。アナウンスや演劇などの基本を身につけるために練習がされているようです。たくさんの外郎売のページが検索されます。印刷用に「外郎売りの科白」もご利用ください。
サイトの中には音声も聞かせてもらえるページもありました。それは声優演技研究所の「外郎売」(分速約400字。4分34秒)やコチサの外郎売(分速約510字。3分40秒)(このページにはCDを購入できる案内もあります。女性の声でmp3ファイルもありサンプルとしても勉強になります。)また口上部分の語句などの注釈をしたページとして仮想劇団くじら座の外郎売は大変参考になります。
鼻濁音は、「カ゜、キ゜、ク゜、ケ゜、コ゜」で表しました。このページはある一定のスピードで文字をスクロールさせ、それぞれのスピードを体感できたらとの思いで作ってみました。NHKの標準的アナウンサーのスピードが分速300字ということがいろいろのところで書いてありましたので、それを参考にいくつかのスピードのものを作成してみます。
このページのスピードはおおよそ分速400字です。約4分37秒。(1844字)
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拙者(せっしゃ)親方(おやかた)と申(もー)すは、御立合(おたちあい)の内(うち)に御存知(ごぞんじ)の御方(おかた)もござりましょーが(カ゜)、お江戸(えど)を立(た)って二十里(にじゅうり)上方(かみカ゜た)、相州(そーしゅー)小田原(おだわら)、一色町(いっしきまち)をお過ぎ(おすキ゜)なされて、青物町(あおものちょー)を上(のぼ)りへ お出(い)でなさるれば、欄干橋(らんかんばし)虎屋藤右衛門(とらやとーえもん)、只今(ただいま)では剃髪(てーはつ)いたして圓斎(えんさい)と名乗(なの)りまする。元朝(がんちょー)より大晦日(おーつコ゜もり)まで、お手(て)に入(い)れまする此(こ)の薬(くすり)は、昔(むかし)、珍(ちん)の国(くに)の唐人(とーじん)、外郎(ういろー)と云う人(ゆーひと)、我が(わカ゜)朝(ちょー)へ来(き)たり。帝(みかど)へ参内(さんだい)の折(おり)から、此(こ)の薬(くすり)を深(ふか)く籠(こ)め置(お)き、 用(もち)うる時(とき)は一粒(いちりゅー)ずつ、冠(かんむり)の隙間(すきま)より取出(とりいだ)す。依(よ)ってその名(な)を、帝(みかど)より「頂透香(とーちんこー)」と賜(たまわ)()る。 即(すなわ)ち文字(もんじ)には、「頂(いただ)き、透(す)く、香ひ(におい)」と書(か)いて「頂透香(とーちんこー)」と申(もー)す。只今(ただいま)では此(こ)の薬(くすり)、殊(こと)の外(ほか)世上(せじょう)に弘(ひろ)まり、方々(ほうぼう)に似看板(にせかんばん)を出(いだ)し、イヤ、小田原(おだわら)の、灰俵(はいだわら)の、さん俵(だわら)の、炭俵(すみだわら)のと、色々(いろいろ)に申(もー)せども、平仮名(ひらカ゜な)を似(も)って「ういろう」と記(しる)せしは親方圓斎(おやかたえんさい)ばかり。もしや御立合(おたちあ)いの内(うち)に、熱海(あたみ)か、塔ノ沢(とーのさわ)へ湯治(とーじ)にお出(いで)なさるか、又(また)は、伊勢(いせ)御(ご)参宮(さんク゜ー)の折(おり)からは、必ず門違(かどちカ゜)いなされまするな。お上(のぼ)りならば右(みキ゜)の方(かた)、お下(くだ)りならば左側(ひだりカ゜わ)、 八方(はっぽー)が八(や)つ棟(むね)、面(おもて)が三(み)つ棟(むね)玉堂造(ぎょくどーづく)り、破風(はふ)には菊(きく)に桐(きり)の薹(とー)の御紋(ごもん)を御赦免(ごしゃめん)あって、系図(けーず)正(ただ)しき薬(くすり)でござる。イヤ最前(さいぜん)より家名(かめー)の自慢(じまん)ばかり申(もー)しても、ご存知(ぞんじ)ない方(かた)には、正真(しょーしん)の胡椒(こしょー)の丸呑(まるのみ)、白河夜船(しらかわよふね)、されば一粒(いちりゅー)たべかけて、その気味合(きみあ)いをお目(め)にかけましょう。
先(ま)づ此(こ)の薬(くすり)を、かよう(かよー)に一粒(いちりゅう)舌(した)の上(うえ)に乗(の)せまして、腹内(ふくない)へ納(おさ)めますると、イヤどうも(どーも)言(い)えぬわ、胃(い)、心(しん)、肺(はい)、肝(かん)が(カ゜)健(すこ)やかに成(な)りて、薫風(くんぷー)喉(のんど)より来(きた)り、口中(こーちゅー)微涼(びりょー)を生(しょー)ずるが(カ゜)如(ごと)し、魚(ぎょ)、鳥(ちょー)、茸(きのこ)、麺類(めんるい)の喰合(くいあわ)せ、その外(ほか)、万病即効(まんびょーそっこー)あること神(かみ)の如(ごと)し。
さて、此(こ)の薬(くすり)、第一(だいいち)の奇妙(きみょう)には、舌(した)の廻(まわ)ることが、銭(ぜに)独楽(ごま)が裸足(はだし)で逃(に)げる。ヒョッと舌が(したカ゜)廻(まわ)り出(だ)すと、矢(や)も盾(たて)も堪(たま)らぬじや(じゃ)。そりゃそりゃそらそりゃ、廻(まわ)ってきたわ、廻(まわ)ってくるわ。アワヤ喉(のんど)、サタラナ舌(ぜつ)に、カ牙(ケ゜)サ歯音(しおん)、ハマの二(ふた)つは唇(しん)の軽重(けいちょー)。開合(かいコ゜ー)爽(さわ)やかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ。一(ひと)つへぎへぎ(へキ゜へキ゜)に、へぎ(へキ゜)干(ほ)し、はじかみ、盆豆(ぼんまめ)、盆米(ぼんコ゜め)、盆牛蒡(ぼんごぼう)、摘蓼(つみたで)、摘豆(つみまめ)、摘山椒(つみざんしょ)、書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそーじょー)。小米(こコ゜め)の生噛(なまカ゜)み、小米(こコ゜め)の生噛(なまカ゜)み、こん小米(こコ゜め)の小生噛(こなまカ゜)み、繻子(しゅす)、緋繻子(ひじゅす)、繻子(しゅす)、繻珍(しゅっちん)、親(おや)も嘉兵衛(かへー)、子(こ)も嘉兵衛(かへー)、親嘉兵衛(おやかへー)子嘉兵衛(こかへー)、子嘉兵衛(こかへー)親嘉兵衛(おやかへー)、古栗(ふるぐり)の木(き)の古切口(ふるきりぐち)、雨合羽(あまカ゜っぱ)か、番合羽(ばんカ゜っぱ)か、貴様(きさま)の脚絆(きゃはん)も皮脚絆(かわぎゃはん)、我等が(われらカ゜)脚絆(きゃはん)も皮脚絆(かわぎゃはん)、尻皮袴(しっかわばかま)のしっ綻(ぽころ)びを、三針(みはり)針長(はりなカ゜)にちよと(ちょと)縫う(ぬー)て、縫う(ぬー)てちょとぶん出(だ)せ、河原撫子(かわらなでしこ)、野石竹(のぜきちく)、野良如来(のらにょらい)、野良如来(のらにょらい)、三(み)野良如来(のらにょらい)に六(む)野良如来(のらにょらい)、 一寸先(いっすんさき)のお小仏(こぼとけ)に、お蹴躓(けつまづ)きやる(きゃる)な、細溝(ほそみぞ)にどじょにょろり。京(きょー)の生鱈(なまだら)、奈良(なら)生(なま)真名鰹(まなカ゜つお)、ちょと四五貫目(しごかんめ)。お茶立(ちゃた)ちょ、茶立(ちゃた)ちょ、ちゃつ(ちゃっ)と立(た)ちょ茶立(ちゃた)ちょ。青竹茶煎(あおだけちゃせん)で、お茶(ちゃ)ちゃつ(ちゃっ)と立(た)ちゃ。
来(く)るは来(く)るは、何(なに)が来(く)る。高野(こうや)の山(やま)のお柿小僧(こけらこぞう)、狸(たぬき)百匹、箸(はし)百膳(ひゃくぜん)、天目(てんもく)百杯(ひゃっぱい)、棒(ぼう)八百本(はっぴゃっぽん)。武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、武具馬具(ぶぐばぐ)、三(み)武具馬具(ぶぐばぐ)、合(あわ)せて武具馬具(ぶぐばぐ)六(む)武具馬具(ぶぐばぐ)、 菊(きく)、栗(くり)、菊栗(きくくり)、三(み)菊栗(きくくり)、合(あわ)せて菊栗(きくくり)、六(む)菊栗(きくくり)。麦(むぎ)、塵(ごみ)麦塵(むぎごみ)、三(み)麦塵(むぎごみ)、合(あわ)せて麦塵(むぎごみ)、六(む)麦塵(むぎごみ)。 あの長押(なげし)の長(なが)長薙刀(なぎなた)は、誰(た)が長押(なげし)の長(なが)長薙刀(なぎなた)ぞ。向(む)こうの胡麻殻(ごまがら)は、荏(え)の胡麻殻(ごまがら)か、真(ま)胡麻殻(ごまがら)か、 あれこそ本(ほん)の真胡麻殻(まごまがら)。がらぴいがらぴい風車(かざぐるま)。起(お)きゃがれ小法師(こぼし)、起(お)きゃがれ小法師(こぼし)、昨夜(ゆんべ)も溢(こぼ)して又(また)溢(こぼ)した。たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、たっぽだっぽ一丁蛸(いっちょうだこ)、落(お)ちたら煮(に)て喰(く)お、煮(に)ても焼(や)いても喰(く)われぬものは、五徳(ごとく)、鉄灸(てっきゅう)、金熊(かなぐま)童子(どうじ)に、石熊(いしぐま)、石持(いしもち)、虎熊(とらぐま)、虎鱚(とらきす)、中(なか)でも、東寺(とうじ)の羅生門(らしょうもん)には、茨木童子(いばらぎどうじ)が腕栗(うでぐり)五合(ごんごう)掴(つか)んでおむしゃる、かの頼光(らいこう)の膝元(ひざもと)去(さ)らず、鮒(ふな)、金柑(きんかん)、椎茸(しいたけ)、定(さだ)めて五段(ごたん)な、蕎麦切(そばき)り、素麺(そうめん)、饂飩(うどん)か、愚鈍(ぐどん)な小新発知(こしんぼち)、小棚(こだな)の、小下(こした)の、小桶(こおけ)に、小味噌(こみそ)が、小有(こあ)るぞ、 小杓子(こしゃくし)、小持(こも)って、小掬(こすく)って、小寄(こよ)こせ。おっと、合点(がってん)だ、 心得(こころえ)田圃(たんぼ)の、川崎(かわさき)、神奈川(かながわ)、保土ヶ谷(ほどがや)、戸塚(とつか)を、走って行けば、灸(やいと)を擦(す)り剥(む)く、三里(さんり)ばかりか、藤沢(ふじさわ)、平塚(ひらつか)、大磯(おおいそ)がしや、小磯(こいそ)の宿(しゅく)を七(なな)つ起(お)きして、 早天(そうてん)早々(そうそう)、相州小田原(そうしゅうおだわら)、透頂香(とうちんこう)。隠(かく)れござらぬ貴賎群衆(きせんぐんじゅ)の、花(はな)のお江戸(えど)の花(はな)うゐ(い)ろう、 あれあの花(はな)を見(み)て、お心(こころ)を、お和(やわ)らぎやと言(い)う、産子(うぶこ)、這(は)う子(こ)に至(いた)るまで、此(こ)の外郎(ういろう)のご評判(ひょうばん)、ご存知(ぞんじ)ないとは申(もー)されまいまいつぶり、角出(つのだ)せ、棒出(ぼーだ)せ、 ぼうぼう眉(まゆ)に、臼(うす)、杵(きね)、擂鉢(すりばち)ばちばち桑原桑原桑原(ぐゎらぐゎらぐゎら)と、羽目(はめ)を外(はず)して今日(こんにち)お出(い)での何茂様(いづれもさま)に、上(あ)げねばならぬ、売(う)らねばならぬと、息(いき)せい引(ひ)っ張(ぱ)り、東方(とうほう)世界(せかい)の薬(くすり)の元締(もとじめ)、薬師如来(やくしにょらい)も照覧(しょうらん)あれと、ホホ敬(うやま)って、うゐ(い)ろうは、いらっしゃりませぬか。(1884字 終)