たったひとつの扉からいろいろなものが取り出せることを私は知っていた。宮下 奈都著『スコーレNo .4』

書き出し部分
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薄暗い穴倉のようなところから空を見上げている。丸く切り取られた空が光る。瞬きのたびに、瞼の裏に光の文様が浮かぶ。ネガフィルムのように反転した景色と、湿った土の匂い。私の最初の記憶だ。
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この文章に引き付けられた。
主人公の津川麻子は骨董屋の三姉妹の長女。
英語が取り柄だが、自分に自信が持てない。貿易会社に就職したが、輸入靴店に出向。二年後会社に戻り、イタリアへの買い付け出張。楽しさを知る。最終部分。

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いろんな引き出しが必要だから雑食でなければならないのだと上司に諭されたとき、私は反論できなかった。今なら、違うとはっきり言える。たったひとつの扉からいろいろなものが取り出せることを私は知っていた。
どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる。広く浅くでは見つけられなかったものを、捕まえることができる。いいことも、悪いことも、涙が出そうなくらいうれしいことも、切ないことも、扉の向こうの深いところでつながっている。
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(宮下奈都著『スコーレNo.4』2007.1.25初版第1刷。2007.5.30第2刷)

初めての作家の小説。いいものに出合えた。

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写真家森本二太郎さん、日の丸写真について「撮影者の意図がそこにあるのなら 、否定されがちな日の丸写真になってもよいのではないか」と。

新庄写真塾の夜の会で塾の会員と新庄村内の飛び入り参加者に話してくださる。日常をカメラで撮影することにより意味を持ってくる、露出やホワイトバランスもゆとりがあれば積極的に操作してみよう、などの指摘も受けました。

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黄金特急、読了

主人公大倉篤が、IT会社を起業し、株式市場で他社の買収、テレビ、ラジオ局への介入へと進むうちに、官僚、旧放送利権などの妨害を受け検察介入の事態に。
「まだまだ、闘いは終わらない。全ては序章・・・・・・。これからが真に自分の闘いが始まる。黄金の都へと向かう自分たちの特急列車は、いまホームを離れたばかりなのだ。・・・篤は強くそう信じていた。」

久間十義(ひさまじゅうぎ)著
実業之日本社発行
初版第1刷 2011年8月25日
479ページ 2段組

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「都合のわるいことは忘れて、都合のいいことだけおぼえてるんてすよ。ほんと 、頭にきちゃう」

「認知症はもともとそういうものです。いらない部分から順に消えていく。そのいらない部分というのは、本人が嫌っていることなんです。好きなことの記憶が書きこまれている脳の部分は、最後まで萎縮しない。それは、つまり、まだ自分を失っていない証拠です。都合のいいことだけおぼえている状態というのは、じつは、好ましい状態なんです。好きなものまで忘れるようになったら、末期だと覚悟してください。」
北國浩二著『嘘』(PHP 研究所、2011.7.22第1版第1刷)

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認知症になりやすい人っていうのはいるんですよ。・・・堅物・・・まじめすぎ る・・・。認知症は

そもそも、心や体が環境の変化に対応できなくなってできなくなって起きる。ぶっちゃけて言うと、マイナスの現実から逃れたい、という目的があるわけです。まじめな人は、あれをしなければいけない、これをしなければいけない、失敗しちゃいけない、なんて、いろいろ考えて、常にプレッシャーを感じてる。そういうことこら解放してくれるのが、認知症です。だから、認知症は人生のプレゼントだ、なんて言う人もいます。

北國浩二著『嘘』(PHP 研究所、2011.7.22第1版第1刷)

!タグ!認知症 北國浩二 嘘

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認知症の患者はね、二つのことを同時にできないんです。

きっと、湯を沸かしているときに、他のことに気持ちがいっちゃったんだなあ。そうするともう、薬缶を火にかけていることが頭から飛んじゃう。これからは、ガスの元栓を締めて出かけるようにしてください。

注意しても平然としてやってるやつだけど、これも基本的には同じことなんです。二つのことを同時にできない。つまり、相手の言い分に配慮しながら、自分の意見を言う。これは二つの異なる行為だから、できないんです。反省していないように見えるのは、病気のせいです。認知症の患者さんは、他人の話を聞かずに勝手なことばかり言う、わがままな人間だと思われてしまうが、そうじゃない。これはね、れっきとした病気の症状なんです

亀田医師が千紗子さんに説明している。

北國浩二著『嘘』(PHP 研究所、2011.7.22第1版第1刷)

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(認知症の患者さんたちは)自己を見失い、、これまでの人生も失なって、悩み 苦しんでいる。

ときにひどいことを言ったり、暴力をふるったりすることもあるが、それはね、彼らがそれだけ苦しんでいる証なんですよ。(P138)

唯一の寄る辺となるはずのじぶんじしんからも、取り残され、切り離されていく。確かなものが何ひとつない空間に、たったひとりで漂っているようなものです。あまりにも深い孤独と混沌ですよ。その不安と苛立ちのなかで、患者さんたちは日々、恐怖に直面しているんです。(P137)

北國浩二著『嘘』より。
認知症患者の孝蔵の同級生であり、医者である亀田が、孝蔵の娘千紗子に話した言葉。

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生きてりゃあ、つらいときもあっけど、いいときも来っから。つらいときは笑う といい。

ひとつの嘘が新たな嘘を生む。この連鎖は気持ちのいいものではなかったが、・・・

千紗子の話を信じた老婆は、同情するようなまなざしを向けてきた。
「生きてりゃあ、つらいときもあっけど、いいときも来っから。つらいときは笑うといい。無理してでも笑ってると、しあわせがやってくる。そんなもんだ」
「そんなものですかね?」
「ほんと、ほんと。そんなもんだよ。難しいこと考えねえで、いい空気吸って、うまいもん喰って、よく寝る。そんでよく笑うこと。そうすりゃ、心も体も健康になっから」
老婆はけらけらと笑った。

北國浩二著『嘘』(2011.7.22第1版第1刷。PHP 研究所)より。

最もしてはいけないことは、何だかわかるか。失敗を恐れて何もしないことだ。

「人間は失敗する生き物だ。失敗を恐れるな。最もしてはいけないことは、何だかわかるか。失敗を恐れて何もしないことだ。」
孝蔵はシャープペンシルで角材に簡単なスケッチを描きはじめた。
「おまえはこれから成長していく。成長というのは、失敗を積み重ねていくことでもある。人間は失敗から学んで成長する。肝心なのは、失敗から学ぶことだ。失敗とは、チャンスのことだ。おぼえておけ」

北國浩二著『嘘』より。認知症の孝蔵が彫刻に興味を持ち出した拓未にむかって。

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嘘をつくことは必要だが、嘘が増えるほど、その上に築かれる人間関係が不安定 になる。

「そうね、いやなことは思い出さなくてもいいわよね」
 千紗子はほっと胸を撫で下ろした。絵本作家だから、話を創作するのは苦ではない。けれど、その嘘をひとりの人間に一生信じこませねぱならないと思うと、重圧がのしかかるのだった。
 千紗子は拓未に信頼される存在になりたかった。だから、できるだけ嘘はつきたくなかった。
 

地蔵は人々の身近にいて、気軽に相談に乗ってくれる存在だ。・・・生きること はそれだけで価値がある。北國浩二著「嘘」

北國浩二著『嘘』(PHP 研究所、2011.7.22第1版第1刷、P132〜)から

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「なんで地蔵は親しみやすくないといけないんだ?」
「釈迦が亡くなってから弥勒菩薩が登場するまでの五十六億七千万年のあいだ、娑婆世界に仏はいない。無仏の時代をしっかり守るように言いつかったのが地蔵菩薩だ」
・・・
ひとり娘の存在は記憶の外にうっちゃっているくせに、そんなどうでもいい数字を正確に覚えている父を、千紗子は苦々しい思いで見つめた。
「地蔵は人々の身近にいて、気軽に相談に乗ってくれる存在だ。とっつきにくかったらまずかろう」

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認知症の孝蔵は仏像を彫り続けている。友人でもある亀田医師に説明している。

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センス・オブ・ワンダー(上遠恵子訳)新潮社 森本二太郎写真

センス・オブ・ワンダー(上遠恵子訳)新潮社発行第26刷以降は、森本二太郎(同名の映画スチール担当)さんの写真が載っている。この中で「氷にくるまれたキク科の枯花」「森床に散り敷く色とりどりの落葉」が素敵だ。すぐ近くにいる森本さんからもっと学びたいものです。

9月30日 21時9分 twiccaから

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宮本政於さんの『お役所の掟』の著書の中から

宮本政於さんの『お役所の掟』の著書の中から。

~『前向きに』は『遠い将来にはなんとかなるかもしれないという、やや明るい希望を持たせる言い方』国会答弁の適切な言葉~

似たような言葉はいくつかあるように思うが、意味合いが微妙に異なるようだ。
~大臣 次官 局長 審議官 部長 課長 課長補佐 係長 係員 補助員(アルバイトの女性)~

踊る大捜査線や相棒等のドラマで、審議官なる人も出てくる。このような序列になっているのだ。

~もたれあいの精神が一番顕著に現れているのが役所。仕事に対する三原則が、遅れず、休まず、仕事せず。~

踊る大捜査線の署長さんなどは、こんなタイプか?番組を見てる者には、とっても面白い存在だが、…

~日本社会を妬みというプリズムを通してみると、いろいろな現象がよく理解できる~

足の引っ張りあいでは、よい社会にならないですね。

~キリスト教原点十戒にも『汝、妬むなかれ』~

妬まないだけではなく、支え合える関係に、なりたいものですね。