本日はようこそ、おいでくださいました。

この寺は、浄土宗のお寺です。名前は念佛寺と言います。 またお寺には山号というものがつくのですが、摂取山と言います。 有名なところでは比叡山延暦寺とか高野山金剛峯寺がありますね。山の名前とばかり思っていたら、これもお寺の山号ということだそうです。

さて、先程はみなさんとご一緒に、「いざ参りなん極楽へ」という、私の手作りの経本をもとに浄土宗のお経を訓読させていただきました。法要などでは音読することが多く、何を言っているんだろう?って思うことが多いことだろうと思います。檀家さんのお宅で拝む時は私はこれらの訓読の経本を使ってみなさんとご一緒に称えております。分かりやすいと言ってもらえることがうれしいのです。

先程唱えたお経は阿弥陀経の約三分の一ほどだったでしょうか?この中に極楽浄土の世界が描かれており、法話の最初にぜひ皆さんと味わいたかったのです。たくさんの宝石でできた池や、楼閣、池の中には蓮華が咲き、そして常にたくさんの鳥たちが鳴いている。その鳥の聲は仏の教えを説いている。宝石でできた木々が揺れて音楽のような音がする。その音を聴くことができるものは多くの功徳を得ることができる。

どうです?

皆様方が今日、セラピーロードを歩かれ、道端にある草花を見、そして香りを感じ、木々の揺れる音、小鳥たちのさえずり、などなど、目で見、耳で聞き、花で匂い、体全体を使って感じてこられたのではないでしょうか。そして、小さな花にも感動されるということはそれが宝物にでも出会えたようにも感じることができたのではないかと思います。涼やかな小鳥のさえずりを聴き、心が洗われたように感じる。まさにセラピーロードの意味合いでしょうね。

そしてそれは、お経にもとかれている極楽浄土の世界とも通じるのではないかと思っております。

ここに花の写真があります。カタクリの花。立てったままだと決してこんな風には見えません。これらは地面にはいつくばって写した写真です。 もっとも最近はデジカメもよくなってモニターの角度を変えることができるのまで出ているから、それがあればへばりつかなくても済みます。妻に「ほしいよなぁ」ってよく言うのですが、「何を言ってるんですか。欲望を膨らませちゃいけません。」と、すぐ否定されてしまいます。住職をしながら中々欲望も小さくならない私なのです。

すみません。話がまたそれてしまいました。花の写真を見て初めて分かる事があるんですよね。カタクリを上から見てたらこんな模様など見ることはできません。私は初めてカタクリを見たとき、というより、写真を写して後でしみじみとこの模様に感動を覚えました。 仏教の教えも、少しずつでも立ち止まり、しゃがみ込んでみて、分かる事があるんではないでしょうか。

わたしもまだまだ分からないことだらけですが、今日は浄土宗基礎講座とでも名付けましょうか。あまり難しくないことを話したいと思います。

この写真、カラスビシャクという花です。7月2日は24節季72候でいう「半夏」と言うそうです。カラスビシャクはまた「ハンゲショウ」という別名もあって、地面の中に球茎をもっており、それを乾燥させて漢方でハンゲと呼んで吐き気止めなどに使われると言います。私はこの花を見ると蛇を思い出して、後ろから蛇でも出て気はしないかといつもびくびくします。蛇が舌を出しているようにも見えますよね。この舌を出しているところが緑色から紫色の仏炎苞となっています。仏と炎と草冠に包むと書きます。

佛の炎と言うのは、前をご覧ください。この念佛寺の御本尊が阿弥陀仏でございます。その仏の後ろに炎の形をしたものがあります。光の背と書いて光背といいます。後光がさす、ということばがありますね。

1.南無阿弥陀佛

阿弥陀というのは、アミターユス(無量の命をもつ無量寿)とかアミターバ(無量の光をもつ無量光)をあらわしており、無限の時間と無限の空間を持っている仏ということです。光背は光を表しているのです。浄土宗では南無阿弥陀佛と念仏を唱えます。それは、その念仏を唱えると阿弥陀仏によって極楽浄土に導いてもらえるからなんです。その南無阿弥陀佛の意味は私は阿弥陀仏を信じます。阿弥陀仏に帰依します。インドでナマステといってあいさつします。これは「私はあなたを信じます」ということだそうです。 あみだくじ、帽子を阿弥陀にかぶる、などと日常の言葉としても使われています。ナムアミダブツが縮まって、ナンマイダ・ナンマイダ、と。

2.数珠

数珠は計算器なのです。荘厳数珠と日課数珠。荘厳数珠は108の玉。日課数珠は27個と20個の2連の形をしています。それに房がついて10個と6個の玉がついています。27個×4で108.108って何ですか? そうです。除夜の数。煩悩の数とも言われます。人間の苦しみは四苦八苦。49しく36.89はっく72。あわせて108とはうまくいったものですが、そのような数につくってあります。この数珠一つで3万遍(32400)の念仏を数えることもできるというものです。浄土宗ではこの2連の数珠を普通持ちます。

3.蓮

お経の中にも底は金で覆われた池の中に青・黄・赤・白の蓮華あり、と出てきました。この本堂の中にも蓮があります。さてどこにあるでしょう? 阿弥陀仏の足元、五具足の中の花。そして周りにある位牌壇の位牌の一つ一つ。すべて蓮の花をかたどっています。 そして、本日は使っていませんが散華の花弁。 なぜ蓮なの?薫がよいから。そして、池の泥水の中でそだっても、水上にはきれいな花を咲かす。

この世の命を終えると、念仏を唱えたものは極楽浄土へ導いていただける。その浄土で生まれるのが、この蓮の台の中なのです。それが位牌の形などにも表れているということです。

畑などの雑草として嫌がられるスギナですが、広島に原子爆弾が落とされ、4,50年は草木も生えないと言われていた町に、真っ先に生えたのが、このスギナだったとも言われています。地中深く根を張り巡らし、その根っこの先は閻魔大王の地獄のいろりの自在かぎにつながっているとも言われているそうです。

しかし、念仏を唱えれば極楽浄土へ参る事ができます。そこは何の苦しみもありません。ただ、この世の中でも、私たちの周りには、私を支えてくれる多くの人がおり、鳥も鳴き、花も咲いています。心豊かにこれからも過していきましょう。

最後に十辺の念仏を唱えて終わりにいたしましょう。